「音が聞こえる喜びを万人に届けたい」−−約6000万円をクラウドファンディング中の骨伝導イヤホン「EarsOpen」

聴覚に障害をもつ方への聴覚補助の役割を担う社会の実現に向けて、耳をふさぐことなく、骨伝導で音を伝えるイヤホン「EarsOpen」を開発するBoCo株式会社。

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現在GREEN FUNDINGでクラウドファンディングを実施しているイヤホン「EarsOpen」。プロジェクト開始からわずか1ヶ月で、目標額の50倍となる5000万円の支援を集め、約1ヶ月の期間を残す2017年4月27日時点で、支援総額は6000万円弱に登ろうとしている。

EarsOpenは、名前の通り耳をふさぐ(鼓膜を使う)ことなく、骨伝導で音を伝えるイヤホンだ。「移動中安心して音楽を楽しみたい」「 音楽を聴きながら会話したい、」「オフィスで仕事をしながら音楽を聴きたい、」「音楽を聴きながら安全にランニングしたい」といった耳をふさがないことで得られる、新たな音楽の楽しみ方を提供する。

音楽の新たな楽しみ方を提供する一方、EarsOpenはもう1つ大きなミッションを掲げている。「鼓膜を使わない」視聴体験による聴覚に障害をもつ方への聴覚補助の役割だ。音楽鑑賞モデルと並び、聴覚補助モデルも用意され、聴覚補助モデルのSuper Early Bird100台分は既に売り切れ。Early Birdにも現在150人以上の支援が集まっている。

同プロダクトを開発・製造するBoCo株式会社・取締役COOの磯部純一さんに、EarsOpenの成り立ちと、目指すべきビジョンを伺った。


(BoCoのメンバー。写真中央が磯部純一さん)

ゴールデンダンス・中谷さんの想いが産んだ「EarsOpen」

EarsOpenを語る上で欠かせないのが、BoCoのグループ会社であり、EarsOpenを技術面で支えるゴールデンダンス株式会社だと磯部さんは語る。

「ゴールデンダンスは、大阪を拠点に骨伝導技術を開発する小さな会社です。代表の中谷さんは骨伝導技術の特許をいくつも持つ、骨伝導のプロフェッショナル。最初は販売代理店としてゴールデンダンスを創業しました。販売をしていくなかで技術的改善点をいくつも見つけ、結果的に製造まで自らの手で手がけはじめた方です。15年近くに渡り骨伝導の技術開発や製品開発を行い、国内のさまざまな企業へOEM/ODMの形でデバイスを納入してきました」

一般的に骨伝導の製品は技術部分をゴールデンダンスのような企業が納入し、メーカー側で製品化を行うケースが多いと言うが、BoCoの場合技術開発からデバイスの製造、製品化までを一貫して社内で行っている。今回のEarsOpenの開発には中谷さんの骨伝導技術に対する強い想いが大きく影響しているという。

「中谷さんは、以前から音が聞こえない人に、骨伝導技術を通して音を届けたいという想いがありました。会社を立ち上げた初期に耳の聞こえないお子さんと、治療を行うドクターと出会ったそうです。彼らは音が聞こえるようになる方法を探して骨伝導に行き着き、中谷さんの元に訪れてきたそうです。彼らと関わってくなかで、骨伝導技術に携わる仕事をやり抜かなければいけない中谷さんは決意しました。

もちろん、特許を取るにはお金がかかりますし、台数が出ないと元も取れません。中谷さんの会社は家族経営の小さな規模ですから、苦しい時期もありました。それでも15年続けられたのは、骨伝導技術を通して、音を届けたいという想いがあったからだったそうです」

難聴者と健常者が同じスタイルであることの価値

磯部さんは7年前に中谷さんと出会い、ゴールデンダンスの技術力や想いに共鳴。サポートをしながら関係性を築き、約2年前に共同でBoCoを創業。チームにはソニーでオーディオ機器の設計を担当していたメンバーなどを加え、製品開発を進めてきたという。

「EarsOpenに開発にあたり、我々が最も力を入れているのは聴覚補助の分野です。といっても聞こえない人だけに届けばいいわけではなく、すべての人に届けることを大事にしています。それは、音が聞こえない方と普通の方が同じスタイルで音を楽しむことが我々の描く理想の姿だと考えているから。そのために聴覚補助モデルも音楽鑑賞モデルも外観は同じにしています。

純粋に音楽を楽しむ機器としてのクオリティも大事にし、アンプやイコライジングなどを駆使して、より高音質で音楽を楽しめるように改良を続けています。音楽が好きな方にも楽しんで頂き、EarsOpenを普及させることも我々の考える理想の姿には必要だからです」

EarsOpenの開では、さまざまな方へユーザーインタビューやトライオンなどを繰り返し、聴覚補助分野でどのように価値を提供できるかを探り続けてきたと磯部さんは語る。

「聴覚補助を必要とする方々へのインタビューを通してさまざまな形の”壁”が見えてきました。たとえば片耳は聞こえる人でも、聞こえない方向から話しかけることが恐く、家をあまり出ない方がいる。また、片耳しか聞こえない方は、聞こえる方の耳を大事にするため、イヤホンで音楽を聴くといった行為は、耳への負担を考え避ける人が多い。補聴器を経由して音楽を楽しもうとしても、補聴器だと聞こえる周波数帯が違うので、楽しめなかったりもする。これらの壁をEarsOpenを通して解決していかなければいけないと改めて感じました」

クラウドファンディングを、より多くの人に知ってもらう機会へ

実際のユーザーの声と向き合いながら開発を進めてきたEarsOpen。現在クラウドファンディングを通して資金調達を進めているが、実はクラウドファンディングを行わずとも初期開発分の資金は既に調達が完了していたそうだ。今回クラウドファンディングを行ったのは、EarsOpenのコンセプトがどれほど社会に受け入れられるかというテストマーケティング的意味合いだった。

「多くの人に知られ、ブランド認知という意味で結果を出せるとよいなと考え、クラウドファンディングでの募集を開始しました。しかし、実際にやってみると、4500人を超える支援者の方々が集まり、支援者の約30%以上の方々から応援やアドバイス、要望といった声をいただけました。発売してみないと分からなかったような情報を開発段階で多く知れることは非常に貴重な経験でした」

支援を集めたのは一般の方々だけではない。総数では言えば少なくはなってしまうものの聴覚補助の方でも支援を集めることに成功している。

「正直最初は、聴覚補助機能は体験していただかないと価値が伝わらないのではないかと考えていました。ですから、オンラインで体験する前に出資するクラウドファンディングは相性がよくないだろうと思っていたのですが、意外にも体験前からの出資を多くいただきました。前述の通り、インタビューなどを通して聴覚補助を必要とする方々の声は集めていましたが、クラウドファンディングでより踏み込んだ意見もいただくことができました。

もちろん、実際に聞いてみて聴覚補助機能が効果的に働かなければ返品できるというのもありますが、そもそもの骨伝導で聴覚補助をするという技術部分に期待をされている方が非常に多い印象です。現在オフィスを活用して、毎週体験会を開いているのですが、いらっしゃる方々はほとんどが聴覚補助モデルを求めている方。実際に使ってみると耳が全く聞こえないかたでも、この骨伝導のデバイスでは聞こえるという方もいらっしゃいました」

無論、耳が聞こえない原因などによって効果は異なるが、骨伝導の技術的にはクラウドファンディング期間中だけで3回もアップデートがなされている。筆者自身貯めさせていただいたが、頭のてっぺんに当ても、骨を伝って音が聞こえる位伝導性が高い。非常に不思議な音楽体験が楽しめた。

磯部さんが先日難聴者向けの学校で実演してみたところ、そのクラスの生徒の場合では約半数以上の学生がEarsOpenの骨伝導によって音が聞こえたという。まだまだ実験段階ではあるものの、着実に成果を上げはじめていると言えるだろう。

4月28日から、SHIBUYA TSUTAYAで先行展示

クラウドファンディングの期間としてはまだ1ヶ月以上を残しているが、出荷・販売開始に先駆け、一足早くEarsOpenを体験できるイベントが、SHIBUYA TSUTAYAにて4月28日より開催。10日間限定ではあるものの、量産前の最終型がSHIBUYA TSUTAYA 3Fに展示される。

骨伝導でのEarsOpenな音楽体験はもちろんのこと、聴覚補助機能を試してみたい方にむけても、クラウドファンディング終了前に一足早くその効果を確認するチャンスを提供する取り組みだ。新たな音楽体験の提供、そして聴覚補助を必要とする人がより暮らしやすい未来を見据えてBoCoが歩もうとする未来に期待したい。

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小山 和之
小山 和之

編集者・ライター。1989年生まれ。建築の意匠設計を経て、Webコンサル会社にて企業のWeb戦略ディレクション、オウンドメディアの企画・立ち上げ・編集等に従事。傍ら個人でもフリーの編集者・ライターとして活動した後、現在に至る。

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