世界9拠点を構えるシェアハウス・ネットワークが辿り着いた「Doocracy」という意思決定モデル #sharesummit2017

世界に9拠点を構える国際的コミューン・ネットワーク「Embassy Network」が「シェアサミット2017」の「SHARE and LIVE」セッションに登壇。

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2017年11月8日から9日にかけて「シェアサミット2017」が開催。セッション「SHARE and LIVE」では、世界に9拠点を構える国際的コミューン・ネットワーク「Embassy Network」のアムステルダム拠点に住み、同ネットワークのアンバサダーを務めるアヌーク・ルハク氏が登壇。同氏が紹介するEmbassy Networkからは、新しいシェアハウスの形が見えてくる。

「コミュニティ」が自分の人生に欠けていることに気づいた

現在はEmbassy Networkのアンバサダーとして世界各地をまわるアヌーク氏。Embassy Networkに住むまでは仕事に人生を捧げるワーカホリックだった。無我夢中で働く中で、ふと「自分自身の人生に足りていないものは何か」と疑問を持った。

「仕事に夢中になるあまり、私の人生には欠けていたものがあると気づきました。それは、「コミュニティ」でした。友だちと予定を決めて会うことはありましたが、家に帰ればひとり。でもシェアハウスの場合はそうではありません。一日の終りに一緒に時間を過ごせる人がいて、興味深い会話ができる。私はそんなEmbassy Networkのあり方に惹かれました。」

「日中の働いている時間は、家にいる時ほど刺激的な会話をしていない」とアヌーク氏は語る。これほどまでにアヌーク氏を惹きつけた「Embassy Network」はどのようなシェアハウスなのだろうか。

世界に9つの拠点が存在する「Embassy Network」とは?

Embassy Networkは2012年にサンフランシスコの一軒家で始まった。現在ではコスタリカやネパールまで拠点は拡大し、世界で9つの家を構えている。初期は25歳から35歳程度の人々が住んでいたが、現在は25歳から40代前半までの人々が住み、その年齢層は広がりを見せている。

住んでいる人々は、科学者や技術者、アーティストやクリエイターなど様々だ。共通しているのは「新しいことにチャレンジしたいという意欲を持ち、人生で消費以外のことに取り組みたい」そんな気持ちを持って部分だと、アヌーク氏は語る。

Embassy Networkに住むための審査はない。そこには多くの人を受け入れる寛容性があった。

「私達のコミュニティでは多様性を重視しています。入居者の多くは知人の紹介などで集まりますが、異なるバックグランドの人を積極的に招くために『ぜひ入居してほしい』とスカウトすることもあります。」

多くの人を受け入れたいと語る一方で、「どのような人に来て欲しいか」はあえて明確に定義しないという。

「独自の考えや思想、哲学を持つ人に来て欲しいと考えています。ですが、はっきりと入居の条件を決めたくないんです。」

条件を曖昧にすることで、解釈に余白が生まれ、より多様な人が集まる環境をつくろうとチャレンジしているように感じられた。

Embassy Networkの3つの特徴

世界各国に存在するコミュニティはそれぞれ運営体制は異なるが、共通原則はあるという。アヌーク氏はその3つのルールについて教えてくれた。

1.毎月食費を払う

ともに暮らしていても、疲れて仕事から帰ってきてベッドルームに篭ってしまっては、シェアハウスで暮らす意義を見出しにくい。

「Embassy Networkでは一緒に料理や食事をすることで、そこで自然と生まれる会話やお互いの日常生活のシェアが大事だと考えています。」

Embassy Networkでは、居住費の他に食費を収めることで、家の食べ物をシェアする取組を行っている。

「メンバーは冷蔵庫を開けて、好きなものを食べられるんです。この仕組みがあることで、居住者は家に友だちを連れてきててくれる。その友だちと料理をしながら様々な交流ができるんです。」

2.小さな共同スペースを多く設置する

シェアハウスといえば、大きな共用スペースと自室というプライベート空間が切り分けられているイメージがある。だが、Embassy Networkでは巨大な共有スペースは置かない。

「家の中に大きなリビングルームをひとつ置くのではなく、小さな空間をたくさん用意しています。空間が大きすぎると、それぞれが角に篭ってしまい、人と人の交流が生まれにくくなります。」

より親密にコミュニケーションを取ったり、小規模がグループで様々な活動を行うためには、複数の部屋が必要ということだろう。

3.ゲストの滞在を受け入れている

Embassy Networkはゲストの訪問や滞在を歓迎している。

「十分な数の居住者がいて、コミュニティの規模を維持することは大切です。全体の7割は長期的に住む人で、彼らが文化やコミュニティを形作ります。残りの3割はゲストです。彼らは一泊から最長は2ヶ月程度、Embassy Networkに滞在します。外から新しいアイデアを持ってきて、コミュニティの空気を新しいものにしてくれるんです。」

それぞれのコミュニティではゲストの来訪を促すために様々な取り組みを行っている。そのうちのひとつが、オープンドアだ。ディナー、レクチャーなどの様々なイベントを開催し、地域コミュニティの方にも参加してもらえるようにアプローチしている。

コミュニティを機能させるための「Doocracy」という意思決定モデル

Embassy Networkでは最近、試験的な試みを始めたそうだ。それはコミュニティが採用している「Doocracy」という意思決定モデルだ。集団で暮らす上では、どのように全員の合意の上で意思決定をするかが大切になる。「一緒に暮らすことは、大きな決断をともに下すこと」とアヌーク氏は語る。

何年もかけて様々案意思決定やガバナンスモデルを試した上で、「Doocracy」に辿り着いた。「Doocracy」とは、「Democracy(民主主義)」のように合意形成をもとに意思決定を行うのではなく、個人が自分自身の役割やタスクを決めてプロジェクトを進め、その責任も個人が負うというガバナンスモデルのことだ。この仕組みを機能させる上で大切はことは何だろうか。

「Doocracyを機能させるためには、お互いが信頼していることが大切です。同じ家に住む人を心の底から信頼し、コミュニケーションを取ること。信頼がなければ、コミュニティを良くしようと自分の意思で何かを購入したとしてもメンバーはら反発を受け、返品しなければいけなくなります。」

「Doocracy」が円滑に機能するには、お互いの意思決定や判断を信頼し、任せることが大事だという。

Embassy Networkは試行錯誤しながら、理想的なシェアハウスのあり方を模索しているように感じられた。セッションを通して印象的だったのは、「Embassy Networkは大きな目的を達成するための家」というアヌーク氏の言葉だ。ともに住むだけではなく、様々な意思決定を行う共同体というあり方から、「シェアハウス」の持つ価値を改めて考えてみたい。

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岡田 弘太郎

フリーランスの編集者・ライター。 1994年生まれ、慶應義塾大学でデザイン思考/サービスデザインを専攻。「greenz.jp」のライターインターンや、複数のウェブメディアで編集を経験し、現在は編集デザインファーム『inquire』に所属。博報堂DYグループ「SEEDATA」インハウスエディター。「SENSORS」「greenz.jp」「Biz/Zine」などの媒体で執筆。関心領域はデザイン、テクノロジー、イノベーション、音楽を中心としたカルチャーなど。

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