災害時に「日本語を理解できない」人を救うために–知っておきたい「やさしい日本語」とは

在日外国人や訪日外国人が増えている今、震災が起きたときに助け合う仲間は日本人だけではない。「災害弱者」と言われる彼ら彼女らと共に震災を乗り越えるために、わたしたちが身につけるべきなのが「やさしい日本語」だ。

あまり日本語の得意でない中国人の方が経営している中華料理店で働いていた友達から驚くべき話を聞いた。

「あたたかいスープが飲みたい」と言われれば分かるんだけれど、「あったかいスープが飲みたい」と言われると分かんないみたい。

外国人にとって日本語のどこが難しいのか。ひらがなだけでなく漢字やカタカナもあること、主語が略されることが多いこと、わたしが思い浮かべたのはこの程度だった。

「あたたかい」と「あったかい」、ほんの少しの違いが彼の理解を阻むということをわたしは知らなかった。外国人にとって理解しやすい日本語とはどういったものなのだろうか。

災害時、「情報弱者」は「災害弱者」になる

「やさしい日本語」という考え方がある。

普通の日本語よりも簡単で、外国人にもわかりやすい日本語のことだ。

「やさしい日本語」について考えられるようになったきっかけは、1995年1月に起こった阪神淡路大震災までさかのぼる。この地震では日本人だけでなく、日本にいた多くの外国人も被害を受けた。その中には、日本語も英語も十分に理解できず、必要な情報を受け取ることができない人もいたという。

災害時、災害情報を受け取れるか受け取れないかで被害を受ける割合はどのくらい変わってくるのか。それを示すデータがある。

国際防災の10 年国民会議事務局(財)都市防災研究所(1995)『阪神淡路大地震に
おける在日外国人被災状況調査』をもとに弘前大学人文学部が制作した「やさしい日本語」のパンフレットによると、「阪神淡路大震災において、100人当たりの死者の数が日本人の場合0.15人なのに対し外国人の場合0.27人と約2倍。100人当たりの負傷者の数が日本人の場合0.89人なのに対し外国人の場合2.12人と約2.4倍」と、明らかに外国人の方が高い割合で被害を受けていることが分かる。

「やさしい日本語」の学び方

「やさしい日本語」とはどういったものか。

弘前大学人文学部が制作したパンフレットに「やさしい日本語」に言い換えるときの基本原則が記載されている。

  • 重要度が高情報だけに絞り込む
  • あいまいな表現は避ける
  • 難解な語彙を言い換える
  • 知っていると役に立つ災害語彙*には「やさしい日本語」に言い換えた表現を添える
  • 複雑で分かりにくい表現は、文の構造を簡単にする

災害語彙 ふだんは見聞きしないが、日本人なら知っていて当然とされる語彙のこと。災害が起きたときに身の安全を保つために必要な重要語。

「やさしい日本語」のパンフレット-弘前大学人文学部より引用

これらの基本原則を使って「やさしい日本語」に言い換えることには2つのメリットがある。ひとつは、その情報がその場で理解しやすくなるというメリット。もうひとつは「機械翻訳」を利用した際、「やさしい日本語」に直してから外国語に訳したほうが、意味の通る訳文になりやすいという点である。

そんな「やさしい日本語」はどのように学べばいいのだろうか。

1つは、E ラーニング版 わかる! 伝わる! はじめての「やさしい日本語」を利用すること。2つ目は、「やんしす」(YAsasii Nihongo SIen System)を利用することだ。

「やんしす」とは、外国人にとってどのような単語や表現が難しいかを知ることのできるアプリ。

こちらの例文では、録画という単語が外国人にとっては理解するのが難しく、消されたの「れ」という受け身の言葉も難しいので簡単な単語に置き換える必要がある。

誰もが発信者になれる時代

「やさしい日本語」を身につけるのはアナウンサーやラジオのパーソナリティなどの情報を伝える職業に就いている人だけで良いのではないか、と思う人もいるかもしれない。

しかし、災害時に役立つのはそういった人たちが流す情報だけではない。SNSも大きな情報源となり得る。そのSNSで情報を発信するのは誰か。紛れもなくわたしたちだ。誰もが発信者になれる時代だからこそ、わたしたち一人ひとりが「やさしい日本語」を身につける必要がある。

2020年東京オリンピックまであと約2年と4カ月。「やさしい日本語」を身につけることも、わたしたちにできる立派な「おもてなし」だ。

片桐 遥

1996年生まれ。横浜市立大学にて社会学を専攻。趣味はテレビ鑑賞と音楽鑑賞、読書など。尊敬する人はアメトークやロンドンハーツのプロデューサーの加地倫三さんと作家の西加奈子さん。

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