採用オウンドメディアはやるべき?メルカリのコンテンツプラットフォーム「mercan(メルカン)」運営の裏側

PR Table主催のイベント「採用オウンドメディアってぶっちゃけどうなの?」で語られたメルカリのコンテンツプラットフォーム「メルカン」の運営の裏側をレポートしました。

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昨今では、優秀な人材を獲得することの価値がさらに高まり、企業が採用のために情報発信に力をいれるようになりました。複数ある事例の中でも、注目を浴びているのがメルカリが運営する「mercan(メルカン)」です。

メルカンは、フリマアプリ「メルカリ」の企画・開発・運営を手掛ける株式会社メルカリが運営する、会社の今を伝え、採用促進を目的としたコンテンツプラットフォームです。PR Table主催で2月14日(水)に行われた「採用オウンドメディアってぶっちゃけどうなの?」では、メルカン編集長の松尾彰大さんがゲストとして登壇。

松尾さんは、メルカリに入社する前はエン・ジャパン株式会社が運営する「CAREER HACK」のチーフエディター/ディレクターを務めていました。メルカリに転職後も、HRグループに身を置きながらインハウスエディターとして活躍。今回、編集・ライティングとしてのスキルをどのように採用に活かしているのか。その知見が共有されました。

参照記事:「インハウスエディター」という働き方

ファシリテーターは今回のイベントを主催している100社以上の企業のインタビューを掲載しているストーリーテリングのプラットフォーム「PR Table」取締役/編集長の菅原弘暁さんです。本レポートでは、同イベントの様子をお伝えします。

「メルカン」創刊のきっかけ

メルカリには人事として採用され、入社した松尾さん。なぜ人事がウェブメディアを立ち上げることになったのか、松尾さんはこう話します。

松尾さん:
メルカンを立ち上げたきっかけは、入社する前に取締役の小泉と話して、「もし入社したら、メルカリでどんな仕事をする?」と聞かれたことです。その質問への私の回答のひとつが、採用・コーポレートブランディングに特化したオウンドメディアを作ることでした。

入社当時のメルカリは、すでに知名度もあり、自然と取材される状態でした。ただ、他のメディアに載るだけでは、「伝えるべきメッセージ」の全てをコントロールできるわけではありません。何かしらの理由で記事を意図しない形で掲載されたり、メディアの都合で消される可能性もあります。

自社の事業の成長速度や業界からの注目度を考えると、自社で媒体を持ち、安定的に発信していくことが望ましいという結論に至りました。

メルカンを立ち上げた際は、それまで採用にかけていたお金をコンテンツに使っていくことで、長く価値を残すことを狙っていたそうです。

松尾さん:
以前、人材会社にいた経験からわかっていたことですが、人を採用・雇用するのには一般的にとてもお金がかかります。

メルカリではもともとリファラル(縁故)採用がワークしていたので、ストック型のコンテンツをプラットフォームとして持つというメルカンの立ち上げも合理的な判断だったと思います。

皮算用するわけではないですが、社内で「やる・やらない」の意思決定ができなければいつまでたっても動かない。メルカンは、「Go Bold(大胆にやろう)」というメルカリのバリューの下に、成功の仕方はあとで考えるという気概でやっていました。

「メルカン」の運用について

松尾さんは、メルカンの編集体制について次のようにコメントしています。

松尾さん:
前職から取材・ライターの経験があったので、初期のメルカンでは私が中心となってコンテンツをつくるようにしていました。今は人が増えたので、自分がメルカンにかける時間は1日2時間程度に収まっています。週に1度の編集会議で、各部署に所属しながらメルカンも担当する編集チームが6〜7人集まって、ネタやスケジュールを決定。私は、掲載前の企画チェックに業務を寄せていて、コンテンツに合わせてメンバーが取材や執筆、撮影などを行っています。

メルカンはコンテンツを社内で内製していることも編集体制の特徴のひとつ。一体、どのような考えでコンテンツを内製しているのでしょうか。

松尾さん:
オウンドメディアを運営するには、自分たちで情報を発信していかなければならない。すなわち、コンテンツを作る力と継続して更新する体力がなければメディアとして成立しません。だから、自分たちでコンテンツを作ることが運営の第一歩ですね。

コンテンツは全て社内で内製しているというと驚かれますが、メルカンのコンテンツでもっとも大事なのは企画の切り口。ライティングやカメラの技術ではないと思います。どんなコンテンツを出すかによって、リソースのかけ方が変わりますが、基本的には記事の構成さえ組めれば誰でもできることだと思っています。

記事の一例

メルカンは、採用を目的としたオウンドメディア。KPI(目標)は一体、どのように設定しているのでしょうか。松尾さんは、メルカンのKPIについてこう語ります。

松尾さん:
基本的にKPIは置いていません。メディアとしてPVやシェア数を追うことはありませんし、社員へSNSへの拡散を強要するなんてことは絶対にありません。強いて言うなら、適切な頻度での更新を心がけていますね。イベントレポートやインタビューといったコンテンツは、週に2〜3本程度アップしています。メディアとして収益化を目的とするのであれば、KPIを設定するべきです。しかし、メルカンの目標は採用ブランディングの形成や入社後の定着と早期活躍です。目的や目標が何なのかは間違えないように気を配っています。

KPIがなくとも、採用を目的としたメディアであれば、広く認知してもらったほうが良いように考えられますが、メルカンでは認知拡大も狙っていないそうです。

松尾さん:
認知拡大はしなくて良いと思っています。Googleで定期的に「メルカン」と調べている読者がたくさんいるとは思えません。社内報的な役割を含んだメディアなので、届けるべき人に届けば良い。

その代わり、「採用候補者がメルカンの存在を知っていたか」、「入社した人にどれだけメルカンが定着しているか」ということをヒアリングしています。今のところ、ヒアリングでの認知率は100%です。

採用オウンドメディアは”やらない”ほうがいい

メルカンの運営は「メルカリだからできること」だと考えているそうです。その理由について、松尾さんは以下のように語っています。

松尾さん:
良い営業マンは自分が売り込む商品を素晴らしいと思っているからこそ自信を持って売れるという話をよく聞きます。私たち人事や広報に限らず、メンバーそれぞれが「メルカリ」というプロダクトや会社が素晴らしいと思うからこそ、「発信することで採用につながる」と確信できるんです。会社自体が「良質なコンテンツ」なんです。

続けて、メルカリではオウンドメディア運用による「採用への効果はある」と松尾さんは語ります。

松尾さん:
社員の友人を介して採用する際には効果が大きいと感じます。メルカリに少しでも興味を持ってくれた方に、社員からメルカンのURLを送るだけで、会社の雰囲気を伝えられる。紹介相手が社員と違う職種でも、該当職種についてきちんと伝えることができます。そして、セッティングされた採用ランチや面接でも「メルカンのあの記事を読みました!」と候補者から声をかけてもらえるだけで、心の距離がグッと近づきます。

応募や内定につながるだけではなく、入社後に会社や社員を知るきっかけになるのが大きいですね。社員のご家族にもメルカンを見てもらうことで、どんな環境で仕事をしているのか把握しやすい。候補者が入社した後、メルカンのインタビューが会話のきっかけになることもあるんです。

松尾さんの元には、採用オウンドメディアをやりたいと相談しに来る方も多いそう。採用オウンドメディアは、実際やるべきなのかどうか、松尾さんはどう考えているのでしょうか。

松尾さん:
よく聞かれるんですが、毎回「採用オウンドメディアはやらない方がいいよ」と答えています。目に見える効果が出るまでは時間がかかるし、それまでコンテンツを更新し続けるのは大変骨が折れます。

それでも、メルカンが運営できているのは、全社に姿勢が共有されているからでしょう。結局、プロダクトを作るのも、社風を作って行くのも「人」ですから。メルカリのミッションを達成するためにいま私たちが優先すべきは優秀な人材の採用です。特に経営陣は「本気で採用しなければ会社が潰れる」くらいの覚悟でいる。

メルカリ社内では、四半期ごとの目標達成への進捗がいつも色で表されているのですが、採用チームだけいつもイエローかレッドです。グリーンになるのは期末の達成した瞬間だけ。それだけ常に、採用に対して危機感があります。社員同士も、優秀な仲間と一緒に働きたいという意志が共有できていますし、「最近良い人いない?」という声がけが、経営陣から頻繁に降りてきます。もし全社で採用に対しての危機感を共有できていないのであれば、それは経営の責任だと私は言い切れます。

社史が残るメディアに

メディアとして、メルカンの将来はどのような形になっていくのでしょうか。最後に、松尾さんはこう締めくくります。

松尾さん:
会社のステージも事業の成長に合わせてどんどん変わってくるので、メルカンが今後どのような形になるのかは、模索中です。人的コストに見合わなければ、更新を止めることもありえるでしょうし、会社だっていつどうなるかわかりません。

ただ、その中でも確度が高いのは、採用のためだけのメディアではなく、社史や社員のストーリーが残るコンテンツプラットフォームに進化していくことかと思います。そういう意味では、ブランドジャーナリズムに近いかもしれません。HRとして、マーケティングや、広報に、どのように携わっていくのがこれからも楽しみです。もし職種を問わずメルカンに興味があるかたがいれば是非ご応募を(真顔)。

以上、松尾さんの「採用に活かす編集スキル」にフォーカスを当ててお送りしてきました。

ぜひ、採用オウンドメディアを立ち上げるようと考えている企業は参考にしてみてください。

書き手:奥岡けんと。93年生まれのライター・編集者。夢はしくじり先生に出ることです。http://lineblog.me/ketokunsan/

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UNLEASH 編集部
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