中村洋基、並河進らトップクリエイターが語る、クリエイティブディレクターの職能とは−−クリエイティブの「今と未来」【後編】

5月12日に開催されたヘルスケアスタートアップ「FiNC」が主宰するイベント『トップクリエイターたちが語るクリエイティブの「今と未来」』の模様をレポートする。

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5月12日、ヘルスケアスタートアップ「FiNC」が主宰するイベント『トップクリエイターたちが語るクリエイティブの「今と未来」』が開催。

クリエイターの働き方や組織論、今後求められるマインドやスキルについて、業界を牽引するプロダクションやトップクリエイターが集まり発熱した議論を展開された。本記事ではその模様をレポートする。

前編はこちら。

デザインファームが見据える世界と未来と企業−−Takram×グッドパッチ×FiNCらが語るクリエイティブの「今と未来」【前編】

イベント後半の第2部では、PARTY Creative Directorの中村洋基さん、電通デジタル共同CCOの並河進さんをゲストに。FiNC CCOの小出誠也さんがホストとしてファシリテーションを担当し、パネルディスカッションが行われた。

本記事ではディスカッション内からいくつか注目のトピックをピックアップしてご紹介していく。

注目を集めるクリエイティブの方程式

はじめにゲストとして登壇したお二人を簡単に紹介していく。

並河さんは電通のコピーライターとしてキャリアをスタート。ムーブメントが始まる前の十数年前からソーシャルデザインに携わり、2008年同社内に電通ソーシャル・デザイン・エンジンを立ち上げ、クリエイティブディレクターに就任。

王子ネピアの『nepia 千のトイレプロジェクト』や日本ユニセフの『「世界手洗いの日」プロジェクト』をはじめ、最近ではヤフーの『Search for 3.11』を手がけ、400万人が参加する巨大プロジェクトに成長させた。現在では電通デジタルの共同CCO(Chief Creative Officer)としてクリエイティブ部門全体を指揮している。

中村さんはフリーランス、電通でのテクニカルディレクターを経て2011年PARTYを共同創業。クリエイティブディレクターとして現在活動している。中村さんといえば、電通時代に、リッチメディアバナーでカンヌライオンズやインタラクティブ・アド・アワードなど数多の広告賞を総なめしたことでも知られる人物だ。

PARTYではDesigning Experiencesをテーマに、デジタル空間だけにとどまらないあらゆる体験をデザインしているという。成田空港第3ターミナルの設計デザインや、サンスターの歯みがきIoTデバイス『G・U・M PLAY』の開発といった非デジタル空間の案件も数多くこなしている。

さまざまな有名プロジェクトを手がけるトップクリエイターのお二人に、まずは得意とするクリエイティブについて語っていただいた。

小出「これまでさまざまなクリエイティブやプロモーション施策を展開されてきたお二人ですが、中でも得意とされていらっしゃる分野や方法論、上手くいく方程式みたいなものはあるのでしょうか?」

中村「僕が得意とするのはコミュニケーションや体験を作ること。普段の行動導線上に遊びの種を用意し、横の人を巻き込んで何かをしたくなるように仕向ける体験です。遊びを作って人を集め、何百、何千万人もの人に楽しんでもらうというのが僕のなかでは打率が高い方法です。たとえば10年前、ホンダのCR-Zという車のプロモーションを担当しました。当時はmixi全盛期だったのでmixiアプリをつくり、名前にCR-Zと入れたら抽選でCR-Zをプレゼントするキャンペーンを実施。周りの人を巻き込んで参加させると当選確率が上がる仕掛けを用意して、周囲を巻き込んでもらい、計80万人以上が参加してくれました」

当時mixiでは一人あたり平均21.5人のマイミク(つながっている友人)がいると言われており、キャンペーン効果としては80万人×21.5人規模に及ぶという。中村さんはこのmixiのキャンペーンで東京インタラクティブ・アド・アワードを受賞している。続けて、最近の施策についても言及。

中村「最近では『バレンタインポスト』というキットカットのコミュニケーション施策を担当したのですが、この企画では僕がやりたいことを実現しました。というのも、僕自身最近バレンタインにチョコをもらえなくなったんです。38歳二児の父なんで仕方ないかもしれないんですが、やっぱり欲しい(笑)。

そこで僕はTwitterのフォロワーが1万人くらい居るので、Twitter上で『チョコください!』と言えるような施策を考えました。チョコを渡すためのポストを設置し、ネットを通してみんなでチョコを渡し合う『バレンタインポスト』を企画。1ヶ月で5億PVを達成しました。これをかっこよく言うと、生活の中からインサイトを見つけたというわけです(笑)」

デジタルならではの拡散する施策。そして自分起点でやりたいことを実現すると笑いながら語る中村さんだが、並河さんもこの点に関しては同じように考えている部分があるという。

並河「僕が最近作った『正装白T』も中村さんのバレンタインの話に近くて、自分が欲しいからはじめたやつでした(笑)。白Tが透けるのに悩んでいた仲間何人かと一緒に作ったんですが、あれも確かに生活の中でみつけたインサイトです。

ソーシャルや各種メディアにも取り上げていただきましたし、初回分、再販分ともすぐに完売しています。起点は自分の私利私欲なんですが、その欲が一般化されていればいるほど、多くの人に評価を得やすいわけですから、方法論としては持っておくべきだと思います」

続けて並河さんは、ソーシャルデザインが話題に上がる前からソーシャルデザインの活動をしていたことを含め、時間差で注目を集める場合もあると指摘する。

並河「ソーシャルデザインもそうですし、僕が2007年頃に出版した『下駄箱のラブレター』も時間差で注目されたものでした。書籍を通してラブレター評論家という肩書きがついたので、これはラブレターの仕事が来るのではと思ったんですが、当時は全く来なかった(笑)。

ところが、昨年突然NHKからラブレター評論の仕事が来たんです。当初は失敗だと思ったものも時間差で注目されることもある。種をまいておけば、全てではないにしても後々収穫につながるというのは1つの気づきでした」

チームを作る、クライアントを握る、決断をする。クリエイティブディレクターの職能とは

さまざまな有名プロモーションを担当してきたお二人。ただ、クリエイターとして一流であることと、クリエイティブを統括する役割とでは求められるポジショニングやスキル、職能なども変わってくる。

続いてのパネルでは、クリエイティブディレクターとしての経歴を持つお二人へ、クリエイターとして上を目指すに必要な要素についての質問が投げかけられた。

小出「クリエイティブディレクターと言えばクリエイティブの最高責任者という印象がありますが、どのようなスキルや素養が求められるのでしょうか?」

中村「クリエイティブディレクターと一口に言っても業種によって異なりますが、広告業界の場合のクリエイティブディレクターはほとんど決断することが仕事になります。僕自身やはり決断を迫られることが増えるようになりました。

もう1つ大事なのはクライアントとの関係性を作ること。代理店の場合、何人もの営業やプランナーといった人が間に入ることでクライアントとの距離は遠くなります。するとクライアントと一緒に作り上げていく関係性を作ることが難しくなる。

僕は『クライアントの器より大きいものは最終的にはできない』と思っています。一番いい舞台、良いクリエイティブを作り上げていくためにはクライアントと一緒に作り上げられるような関係性が必要。その関係性を構築していくことがクリエイティブディレクターには必要になってくると思います」

続けて並河さんも決断の重要性を指摘する。同時に、クリエイティブだけに限らないクリエイティブディレクターの職能についても言及していった。

並河「おっしゃるとおり、決断することは必要な要素ですね。チームが進むべき方向を決めることがクリエイティブディレクターの役目だと思います。ただ、制作におけるクリエイティブを監督するだけがクリエイティブディレクターの職能ではないと僕は思っていて。

クリエイティブにもいろいろな種類があります。単純なアウトプットが見える制作だけでなく、メソッドやフレームワークを作ることもクリエイティブですし、ソーシャル・デザイン・エンジンのようなチームを作ることもクリエイティブ。

クリエイティブディレクターを別の視点で捉え、チームの可能性や切り口を探ったりする人であると捉えることもできる。クリエイティブをできるだけ幅広く認識することで、さまざまな技能やスキルがクリエイティブディレクターとしての職能になると思っています」

これからのクリエイターはどこで戦う?

クリエイターとして、そしてクリエイティブディレクターとして。広告、クリエイティブ業界で長く第一線を走り続ける両氏。

リッチメディアバナーや知名度がないころのソーシャルデザインから現在に至るまでクリエイティブの価値は形、媒体、役割を次々と変えてきている。

時代の変化に合わせ、求められるクリエイティブを生み出してきたお二人に、次に注目するムーブメントを伺った。

小出「リッチメディアバナーや、懐かしのmixiなども話題に上がりましたが、昨今VRやIoT、AIなどさまざまなムーブメントが注目を集めています。これまでも、時代の潮流に乗ってきたお二人が、次に来ると注目されていらっしゃるものはありますか?」

中村「広告分野でいうと、今後はさらに広告が生活に溶け込んでいくと思っています。最近の広告は昔よりも難しくなってきている。消費者はデジタルで広告的なものを見ることを嫌います。

最近、記事広告には必ずPR表記をしなければいけないという話がありましたが、これは広告が良い意味で刃物だから歯止めがかかった。ただ、広告としてみることを嫌う流れがある以上、広告はどんどん生活の中に溶け込んでいく。

企画する人はすごく考えないと、みんなに見られるものを作るのは難しくなるでしょう。その1つが、先ほどの遊びの要素を持つシェアラビリティのある体験だと考えています」

近年の広告の流れを踏まえ、今後の広告に求められる役割や形態について語った中村さん。一方並河さんは、テクノロジーの変化全体を捉え語ってくれた。

並河「インターネット以降のテクノロジーによる変化は、産業革命になぞらえると非常に分かりやすいと思います。テクノロジーによってここ10年くらいで起きたのは、より効率を向上させるものがほとんどでした。これは産業革命が起きてすぐの時期に近い。技術を使って、いままであったものの効率や利便性を向上させるという流れです。

このあとに来るのは、生まれたテクノロジーで人々の生活をより豊かにするもの。ですからテクノロジーを通して人々の日常生活を豊かにするものや、面白いことが大事にされるフェーズになるのではないか。なるといいなと思っています」

広告業界を皮切りに、多様なクリエイティブを担うお二人。彼らが多様なジャンルで活躍することは、並河さんが語るようにクリエイティブが活躍する分野の多様性を示唆しているとも言えるだろう。一方で、中村さんが常に時代の流れに合わせ変化を続けてきたように、クリエイティブは技術や環境の変化に合わせ、進化を続けてきている。

トップクリエイターと呼ばれる人々は、常に視野を広く持ち、時代の流れを注視することが求められるようだ。

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小山 和之
小山 和之

編集者・ライター。1989年生まれ。建築の意匠設計を経て、Webコンサル会社にて企業のWeb戦略ディレクション、オウンドメディアの企画・立ち上げ・編集等に従事。傍ら個人でもフリーの編集者・ライターとして活動した後、現在に至る。

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