店舗を通して街を作る「企画」とは——UDS、スマイルズが店舗イノベーターサミット2017で語る

"未来のスタンダードとなる店舗づくり"をテーマに開催されたイベントにて、スマイルズの野崎 亙氏、UDSの高橋 佑策氏が『店舗づくりと街づくり』について語った。

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店舗の形やありかたは、デザインから、コンテンツ、都市との関係性まであらゆる面で変化している。

2017年11月29日に、店舗・オフィスづくり総合プラットフォームを運営するシェルフィーが主催となって”未来のスタンダードとなる店舗づくり”をテーマに開催された「店舗イノベーターサミット2017」では、店舗に起きている変化を第一線で生み出す人々が登壇。店舗における未来の兆しを探っていく場となった。

『店舗づくりと街づくり』のセッションでは、スマイルズの野崎 亙氏、UDSの高橋 佑策氏がゲストとして登壇。THINK GREEN PRODUCEの萱野 喬氏がモデレーターとして参加し、パネルディスカッションが行われた。本記事ではいくつかのパネルをピックアップして紹介していく。

街のコンテクストに、自分たちのやりたいことを乗せた『also Soup Stock Tokyo』

also Soup Stock Tokyo

ひとつめのパネルは「街の価値向上に貢献した店舗事例」。Soup Stock Tokyoをはじめさまざまな店舗を展開するスマイルズと、不動産から建築、施設運営までをワンストップで担うUDS。それぞれ異なる視点で事例が紹介された。

スマイルズの野崎氏が紹介したのは、自由が丘に昨年オープンしたSoup Stock Tokyoの新業態店舗「also Soup Stock Tokyo」だ。場所は自由が丘駅から徒歩2,3分の一等地。事業プロポーザルの案件で、野崎氏が提案したのは街の特徴をうまく取り入れた店舗だった。

株式会社スマイルズ 取締役 クリエイティブディレクター 野崎亙氏

野崎「自由が丘は地主さんが地元の文化性をとても大切にされている街です。お話を聞く中で印象的だったのが、自由が丘は人によって、好きだと思うポイントが異なるんです。200人に好きな店を聞くと1位のお店が4票しか集まらない。それくらい好きと思える要素がたくさんある街なんだそうです。

この街でしかできないものをやるには、既存の紋切り型の店舗ではないだろうと考えました。そこで自分たちが以前からやりたいと思っていた、休日にゆっくりと楽しめるファストフードではないスープストックというアイデアを提案。提案が通ったあとは、建築家の永山祐子さんにお願いし、ほぼスケルトンに近い形の店舗に仕上げていただきました」

also Soup Stock Tokyoの店舗がほぼスケルトンになったのは、地域との関係性を構築する意図がある。たとえば大空間を取った2Fはワークショップが行えるようになっており、近隣の方と交流を深める場となり、開店以来100回近いワークショップが開催されてきたという。1Fがフルオープンになっていることも地域との関係構築に繋がっているそうだ。

野崎「店の外と内という概念を無くしたいと思っていて、街が店舗に入り込んでいる状態を目指しています。自由が丘自体が多様な要素を持っている街ですから、それは店舗の中でも再現できればと思っています」

代々木という街に、ベビーカーを押す姿を呼び寄せた「代々木VILLAGE」

代々木VILLAGE

続けて高橋氏より紹介されたのは、UDSが手がける総合商業施設「代々木VILLAGE」だ。同施設は代々木ゼミナールが保有していた土地の有効活用の相談からはじまった案件だった。当初はラーメン博覧会的なスポットを計画していたが、UDSが提案をひっくり返し、現在の姿になったという。

高橋「代ゼミさんは駅周辺に予備校などの施設をたくさんお持ちです。それらを活かして代々木の街を盛り上げ、街作りをしたいというビジョンをお持ちでした。ビジョンの実現に向けて、手始めに街の空気を変える。将来へつながるものをつくりましょうと提案しました」

代々木VILLAGEはいくつかの飲食店が入居しているが、それぞれの建物はかなりゆとりある配置となっており、敷地内は広く庭が取られている。このプロジェクトでは、総合プロデューサーに音楽プロデューサーとして知られる小林 武史氏。庭のデザインには、そら植物園で知られるプラントハンターの西畠清順氏が起用された。

UDS株式会社 プロジェクトデザイン事業部 執行役員 高橋佑策氏

高橋「代ゼミさんは10年弱で街の全体構想を作り、この代々木VILLAGEのある場所も変化させる可能性がありました。そのため、手前の店舗はコンテナを流用、奥のレストランも簡易的なプレハブでつくり投資額を抑えています。変わっていくべきフェーズで、ちゃんと空間も変わりやすいように意識しました」

作りは簡易だが、空間・体験とも非常にリッチであり、代々木の駅前であることを忘れるような空間に仕上がっている。代々木という場所がもつ記号性が弱く、目的をもって来る人が限られていたこの場所に、新たな人の流れを生み出した。

高橋「代々木VILLAGEの成果として一番大きいのは人の流れが変わったことでしょう。これまでの代々木には無かった、ベビーカーを押す人が集まって楽しくランチをするという光景が当たり前にここにはある。オーナーさんにも非常に喜んでいただけました」

アイデアをいかに形にしていくか。第一線で活躍する事業者の「プランニング」

株式会社THINK GREEN PRODUCE コンサルティング事業部 マネージャー 萱野喬氏

2つ目のパネルは「店舗のプランニングフロー」。よいアイデアが生まれても形にしていくのは容易ではない。両者はどのように形にしているのか事例を交え紹介いただいた。

高橋氏が紹介してくれたのは、UDSが手がけた代々木上原にある複合住宅「NODE UEHARA」だ。同施設はB1Fにレストラン、1Fにカフェ、2〜4Fは共同住宅が入り、食とつながる暮らしをコンセプトにしている。

NODE UEHARA

高橋「NODE UEHARAは小田急電鉄さんが事業主のプロジェクトでした。敷地は駅前の一等地で、当時はコインパーキングでした。小田急さんとしては沿線活性の観点で何かしらをやりたいという思いがあり、ご相談いただいたものでした。

そこで我々が提案したのがTrain to Tableというコンセプト。小田急さんは沿線距離が長く沿線に生産者が多い。一方で代々木は飲食店が多い。小田急を媒介に食で繋がり、代々木を代表する場を作れればと考えました」

UDSのプランニングの特徴は、不動産から入る点にある。場があり、そこをどう活用するかという前段からは入れることが強みとなる。今回の場合収益性が高いコインパーキングが比較対象となったことでコストバランスの面で苦労はしたものの、ここだからこそやるべきというクライアントのニーズをうまく汲んだ企画が功を奏した。

高橋「我々が運営するものは、同じようなブランドが存在しません。基本的に一点もの。土地から入るということが多いというのもありますが、それぞれの場所に合わせ最適な商品企画をしています。だからこそ結果に繋げやすいのだと思いますね」

一方、スマイルズではかなり特徴的なプランニングを行っているという。同社の事業計画はどういったシーンを実現したいかというところからはじまっていく。

野崎「私たちがブランドをつくるときは、数字などの事業計画書ではなく、その場所でどうなって欲しいかというシーンを描くことからはじまります。also Soup Stock Tokyoも、普段スープストックに訪れる人が休日に訪れる場をつくりたいという思いが土台にあり、そこで何が行われるかというシーンのイラストからはじまりました。そのイラストは今もWebサイトのトップに載っています」

同社が感覚的に判断しているのは事業をスタートするところだけではない。収益上とても大切になる出店場所の計画においても、感覚的な判断を大切にしている。

野崎「一般的に出店される際にはマーケットリサーチをやると思うんですが、弊社は一切やりません。今年は10店舗立ち上げるからと場所をプロットするのではなく、案件があって、行ってみて、ここでスープを食べたいと思ったら出店する。感覚的に、自分がその街の住民へ憑依して考えるんです。街に行って、ぼーっと肌に感じる空気を味わう。自分事にできるかがポイントです。

この感覚はとても大切だと思っていて、ここは人が多い、ここは売れるといった理由で出店するとだれも自分事としてお店を考えていない。自分が、自分の奥さんが、自分の友人が行きたいと思うかという感覚で見ると、自分事としてお店を考えられるんです」

場の力が街を変える

イベントの最後は野崎氏、高橋氏それぞれから、店舗作りから考える街について言葉をもらい場を閉めた。両者とも街という大きなスケールに対して、店舗や場がもつ力はとても大きいと語ってくれた。

野崎「僕の場合、街というよりは”場”の視点で見ることが多いのですが、場のもつ力は非情に強い。たとえば、ボーリング場だったところをカフェにしたら、単なるカフェではない体験が絶対に生まれる。それはボーリング場という場の力に他なりません。

個人的には日本初上陸のようなものより、場が力をもつところへ行く方が新しい体験ができると思っていて。場によってコーヒー1杯がまったく異なる体験になることがある。コーヒーの味は確定されたものですが、体験は異なってくる。体験型が注目を集めていますが、そこに必要なのはコンテンツでは無く、場だと思います」

高橋「僕らの場合街作りを仕事にしていますが、街の中の店舗という視点で見ると、店舗は街に小さなきっかけの明かりを灯す役割だと思うんです。先ほど野崎さんから憑依させるという話がありましたが、僕も自分にその街の人の暮らし方を憑依させます。どうすれば街が良くなっていくかを考えるとき、街の人の視点は絶対に欠かせません。小さな明かりを灯す行為の積み重ねが、結果的に街づくりに繋がっていくのだと思っています」

img: also Soup Stock Tokyo, UDS

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小山 和之
小山 和之

編集者・ライター。1989年生まれ。建築の意匠設計を経て、Webコンサル会社にて企業のWeb戦略ディレクション、オウンドメディアの企画・立ち上げ・編集等に従事。傍ら個人でもフリーの編集者・ライターとして活動した後、現在に至る。

『UNLEASH(アンリーシュ)』は、ビジネス、カルチャー、デザイン、テクノロジーの話題を発信するオンラインメディアです。

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