ニューヨークに住む約7万人のホームレスを救う?ブロックチェーンで”身分証”を付与するプロジェクトが始動

ニューヨークのスタートアップ「Blockchain for Change」がローンチしたAndroidアプリ「Fummi」。ブロックチェーン技術を活用することで、家をなくし、社会から孤立した人に個人識別IDを割り振り、公平に支援を行きわたらせることを目指す。

ニューヨーク、マンハッタン。世界の中心ともよばれるタイムズスクエアや、ファッションストアが並ぶ5番街。そのきらびやかなそのイメージとは裏腹に、この街は大きな問題を抱えている。

街にあふれかえるのは、家を、そして身分証であるIDも持たぬ人々。そう、ホームレスだ。

約100人に1人がホームレス

ニューヨークでは、2018年1月現在、約7万7000人がホームレスとして暮らしている。そのうちの多くが身分証となるIDを持たないため、口座開設や預金引き出しなどの金融サービスや、医療や教育、生活支援といった社会福祉サービスを受けられないでいる。

そうした問題を解決するために、ニューヨークのスタートアップ「Blockchain for Change(ブロックチェーン・フォー・チェンジ)」が新サービスとしてアンドロイドアプリ「Fummi(フミ)」をローンチした。

低所得世帯に対し、無償でスマートフォンを提供する「Life Wireless(ライフワイヤレス)」やその他のホームレス支援団体と提携することで、普及を図る。

ブロックチェーン技術を使うと安全な個人識別と暗号通貨の授受ができる

ブロックチェーンでは、すべての情報は暗号化される。暗号化された情報は一定時間ごとにブロック化され、鎖状に連結する。そして、ブロックチェーンに記録された取引履歴は全て公開される。

暗号化し、すべてのブロックをチェーンでつないで公開することで、取引履歴は第三者に読み取られることも改竄することもなくなる。従って、ブロックチェーンで個人識別IDを取得すると、安全に身分が保証できるのだ。

また、ブロックチェーンですべての取引プロセスを自動化するスマートコントラクトを利用すると、取引に第三者が介入できないため、不正を防止でき、ユーザー同士が安全に暗号通貨の取引ができる。

そこで、Blockchain for Changeはオープンソースのブロックチェーン基盤「Hyperledger Fabric(ハイパーレジャー・ファブリック)」とスマートコントラクトを構築するプラットフォーム「Ethereum(イーサリアム)」を活用し、個人情報と金銭を安全に保存・処理できるFummiを開発した。

Fummiが持つ主な機能

個人識別IDの発行

最初にFummiをダウンロードした携帯端末を手にしたのは、ブロンクス区の低所得者たちだ。彼ら一人ひとりにBlockchain IDが与えられる。IDを取得すれば、口座の開設や、金銭の受け取り、居場所の追跡が可能になる。

スマートウォレット機能

このアプリはスマートウォレットの機能も有している。利用できる通貨はドルと暗号通貨の「Change Coins(チェンジ・コインズ)」の二つだ。Fummiの利用履歴を見れば、ホームレス向けのシェルターにいつチェックインしたのか、シャワーやヘアカット、洋服にいくらかかったのか、そして残高が一目でわかる。

支援者とホームレスを繋ぐネットワークを作る

また、アプリ自体が、個人識別、支払い、サービスの中継システムとなることで、支援者達は効率的にサービスを提供できるようになる。Fummiの目的は、「one-stop-shop(ワン・ストップ・ショップ)」、これ一つでホームレスが日常的にサービスを受けられるアプリケーションになることを目指す。

孤立した人々を繋ぐブロックチェーン

これまでホームレスを支援する人々は、人員と時間の多くをサービスの公平性の確認と、支援するホームレスたちの経過観察に割いてきた。しかし、Fummiが支援を必要とするすべての人に行き届けば、簡単にサービスを提供でき、公平性も保証される。

革新的な新技術であるブロックチェーンは、社会から孤立した人すらすくい取るのだ。

林琴奈

1992年生まれ、京都大学院で地質学を専攻。在学中に結婚・妊娠・出産を経験。趣味は読書、Instagram、ラップバトル鑑賞。関心領域は、自然科学・テクノロジー・教育。