25歳のブランドディレクターが挑戦するのは、500年続く「輪島塗」のリデザイン。TBWA\HAKUHODO、QUANTUM、GOのクリエイターも参加

感触が人間の肌に近く、口当たりや手触りがいい漆を用いることで日本人に親しまれてきた漆器。500年の歴史を誇る輪島塗の老舗輪島キリモトは漆の特性を活かしながらも、現代のクリエイティブな感性で漆器をリデザインするブランド「IKI -by KOHEI KIRIMOTO」を始動した。

一人暮らしをしていた頃、食事が少しおっくうだった。作り過ぎたおかずを適当なお皿に盛り、部屋の真ん中のこたつに運ぶ。座ると部屋が妙に広く感じてせつない。しぶしぶ口に付けたお椀はひやりと冷たくて、つるりと無機質だ。

「ぬくもりが欲しい……」

ひとりで暮らしている人や、誰かと一緒に暮らしていても生活時間の違いから一人で食事をすることが多い人は、このように感じたことが一度はあるのではないか。

そんな人におすすめな食器がある。伝統ある輪島塗という技法を用いつつ、科学やプロダクトデザインの側面からリデザインされたプロダクトブランド「IKI -by KOHEI KIRIMOTO」の漆器だ。

人の肌に一番近い食器

輪島塗は古くは500年前から製造されている伝統工芸だ。IKI -by KOHEI KIRIMOTOを運営し、1700年代から続く輪島塗の老舗である「輪島キリモト」は、輪島塗で用いられる漆がもつ人間の肌に近く“手触りや口当たり”に優れた感触という特性に目をつけた。

ブランドディレクターに輪島キリモト代表・桐本泰一さんの息子で25歳の桐本滉平さんが就任し、The Breakthrough CompanyGOの三浦崇宏さん、QUANTUMの井上裕太さん、TBWA\HAKUHODOの徳野佑樹さんらのクリエイターが参画することで、伝統的な技法を現代的にリデザインした漆器を開発した。

それが、「ヒトハダに一番近いコップ」をはじめとした漆器だ。

輪島塗を襲った震災と再生

2007年、輪島塗が生産される石川県、輪島市は震度6強を記録した能登半島地震で甚大な被害を受けた。震災に伴い、輪島塗の製造・販売に不可欠な蔵や店舗が全半壊したことで、輪島塗自体も危機的な状況に追い込まれた。震災の恐ろしさを目の当たりにする中、ブランドディレクターの滉平さんは日本を象徴する文化や伝統工芸の必要性を感じたという。

そこで、文部科学省の留学プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN 」の4期生としてフランスのパリで輪島キリモトの商品を販売し、その実績から留学成果報告会で最優秀賞を受賞した。そうした滉平さん自身の体験がきっかけとなり、IKI -by KOHEI KIRIMOTOは始動した。

器に口をつけて食事をする機会の多い日本でこそ、自ら呼吸し、生きている素材である漆の特性は活かされる。IKI -by KOHEI KIRIMOTOのプロダクトは、3月7日(水)から13日(火)の期間限定で伊勢丹新宿店にて初披露・販売される予定だ。今回は、「ヒトハダに一番近いコップ」(2万6,000円)、「ヒトハダに一番近いお椀」(2万3,000円)、「ヒトハダに一番近いボウル」(4万4,000円)、「ヒトハダに一番近いお皿 大」(3万3,000円)、「ヒトハダに一番近いお皿 小」(1万6,000円/いずれも税別)の5種類を展開する。今後は海外展開も予定しているという。

日々の食事にさみしさを感じている人、何となくぬくもりが欲しい人は、食器から「ヒトハダ」をとりいれてみてはどうだろう?

林琴奈

1992年生まれ、京都大学院で地質学を専攻。在学中に結婚・妊娠・出産を経験。趣味は読書、Instagram、ラップバトル鑑賞。関心領域は、自然科学・テクノロジー・教育。