ニューヨークの都市開発に革命を起こした「一人の主婦」–ジェイン・ジェイコブズを描く伝記ドキュメンタリー

1950年代のニューヨークでは、機能的で合理的な都市計画が着々と進んでいた。そんな都市開発に警鐘を鳴らす一人の主婦、ジェイン・ジェイコブズが提案する”人々が活気づく”革新的な都市計画とは?その詳細を追うドキュメンタリー映画「ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命」をご紹介

用途ごとに建物が区画され、自動車が走りやすい都市。一見、とても素晴らしいアイデアのように聞こえる。シンプルで洗練されていて、なにより機能的だ。しかし、都市に暮らすのは私たち、人間だ。

私たちは最適な選択肢がわかっていても、迷い、悩み、時には回り道をする。コストも時間も割かずクオリティの高いものを手に入れられるのに、愛する人のために手袋を編んだり、ただ電子レンジに入れれば完成する冷凍食品にひと手間をかけて食卓に出したりする。それは都市の中でも同じだ。

自動車ですぐ行ける場所まで、倍以上の時間をかけて歩く。その途中で見たことのないカフェに入ったり、花が咲いているのを見つけて季節を感じたりする。全く効率的ではないが、それらは私たちを満たしてくれる。

私たちにとって暮らしやすい都市とはなんなのか?その答えを探求するための大きなヒントを与えてくれる映画がある。それが、「ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命」だ。

“機能的”なだけの未来の廃墟に革命を

1950年代、アメリカ。当時、アメリカンモダニズムを背景にしたゾーニングと自動車中心の都市計画が行われ、都市は機能的でシンプルなものへと変わろうとしていた。計画の中心にいたのは、ニューヨークの都市計画の大部分を手掛け、“マスタービルダー” と呼ばれた男、ロバート・モーゼス。彼の巧みな戦略によって、計画は淀みなくすすんでいった。

一方で、そうした合理的な都市計画に警鐘を鳴らす人物がいた。ニューヨークのダウンタウンに住む主婦、ジェイン・ジェイコブズだ。彼女は、一見合理的に作られたはずの都市がそこに住む人々から活力を奪い、未来の廃墟となっていく可能性を示唆した。

建築においては一介の素人に過ぎなかったジェイコブズだが、天才的な洞察力と行動力を持っていた。実際に活気溢れる街を、そこで暮らす者の視点で観察し、人々にとって魅力的な都市を作るために緻密で独創的なアイディアを練りあげた。

都市が多様性を保つための4大原則

もしジェイコブズがいなかったら、
世界一エキサイティングな大都市・ニューヨークは、きっとずっと退屈だった。

映画「ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命」より引用

ジェイコブズは都市が多様性をもち、活気づくためには以下の4つの条件が必要不可欠であると主張している。

  1. 様々な人々が、様々な目的で交差できるよう、各地区が2つ以上の働きを持つこと
  2. 街路は短く、角を曲がる機会が多いこと。
  3. 年代や状態の異なる様々な建物が混ざりあうことで、家賃などの建物がもたらす経済的な収益を高いものから安いものまで多様にすること
  4. 各地区で、十分に人口密度が高いこと

都市は誰がつくり、誰のためにあるのか?

モーゼスが強引に推し進める開発プロジェクトを阻止するため、ジェイコブズとその仲間たちは立ち上がる。そして、ワシントンスクエア公園で、グリニッジ・ビレッジで、ローワーマンハッタン高速道路の建設をめぐって、壮絶な闘いを繰り広げていく。

映画では、当時の貴重な記録映像や肉声を織り交ぜ、“常識の天才”ジェイコブズに迫っていく。これは、 私たちが暮らす街の未来を照らす建築ドキュメンタリーなのだ。

私たちの人生は、図面上の直線のようにまっすぐではない。曲がったり、途切れたり、引き返したり、迷ったりする。でも、だからこそ、魅力的に息づくのだ。きっとこの映画は、私たちにまっすぐではないことの美しさを教えてくれるだろう。

映画は、4月28日(土)よりユーロスペースほか全国公開予定だ。現在、前売り券も販売中。気になるあなたは、ぜひ、公式サイトをチェックしてみてほしい。

林琴奈

1992年生まれ、京都大学院で地質学を専攻。在学中に結婚・妊娠・出産を経験。趣味は読書、Instagram、ラップバトル鑑賞。関心領域は、自然科学・テクノロジー・教育。