日本における「移民問題」はどうなる?引き離された家族をつなぐ遺伝子テクノロジーから未来を占う

「移民問題」の深刻化に伴い、強制送還が相次いでいる米国。政府は家族単位での送還を積極的に行う姿勢を打ち出してきたが、未だ離散家族の数は多い。そこに立ち向かうのが、DNA検査スタートアップの『23&Me』だ。同社は、簡易検査キットにより家族の遺伝情報を紐づけ、離散から長い年月が経っても家族が再開できる仕組みづくりに挑んでいる。

久しぶりの帰省は、やっぱり良い。

玄関に入った瞬間から分かる、懐かしい匂い。母がつくるお味噌汁はいつだって美味しくて、父は相変わらずテレビ越しに巨人を応援している。洗濯物の畳み方だって変わってない。

“家族がいる場所に戻れる”という事実は、いつだって安心感を与えてくれる。そう思うのは、私だけじゃないはずだ。しかし、こうした当たり前の生活を送れない人たちがいる。それが移民家族である。

米国の移民問題に伴う「離散家族」の悪化

「移民問題」を抱える米国では、トランプ政権が移民一家の強制送還を“家族単位”で推し進めている。この政策の裏側に見られる理由は、大きく分けて3つ。

1. 親子の離散問題の深刻化

不法入国した成人を刑事裁判にかける「ゼロ政策」の実行により、2018年5〜6月の短期間で2,000人以上の親子が引き離された。米国境の施設にて、親から離され悲しみにくれる子ども達の映像が公開されると、国民からは反発の声が相次いだという。

2. 国民の仕事を担保するため

国内の労働者のなかには、アメリカへの移民が彼らから職を奪い、労働市場の賃金を低下させていると不満を募らせるものもいる。移民を還すことで、国内の労働環境を整えようという狙いがうかがえる。

3. チェーンマイグレーションの禁止を促進

夫がVISAを取得し、妻と子どもを抱えて移住することを意味する「チェーンマイグレーション」。これには、夫が十分な稼ぎを得られず、最終的には麻薬の売買などの悪事に手を出してしまう問題が付随するケースが多い。子ども達はVISAを受給することができないため、教育も受けられないまま、違法滞在の身分で一生を過ごすという負の連鎖を背負うことになる。

上記の問題を受け、米政府は家族単位での移民送還を積極的に行っている。だが、未だに離散家族の数は多い。その問題に立ち向かうのが、DNA検査スタートアップの「23&Me」だ。

DNA検査で離散家族を再び繋ぐ「23&Me」

カリフォルニア州に拠点を置く「23&Me」は、2006年に設立されてからDNAの検査により数多くの人の人生を好転させてきた。事実、彼らのサービスによって数十年ぶりに離れた家族と再会できたという報告は多数寄せられている

DNAの検査は、簡易的なキットを使用した唾液の採取によって測定することが可能だという。採取したサンプルを送り返せば、解析結果はネット上で確認できるという手軽さだ。

この検査でわかることは、「祖先のルーツ」だけではない。「遺伝子変異体の有無」「身体的特徴(視覚・嗅覚など)」「その他健康面(アルコール耐性・睡眠の質など)」についても把握することができる。唾液ひとつからこんなことまで分かってしまうのかと、結果項目数の多さに驚いてしまうだろう。

以前までは499ドルで販売されていたキットだが、現在は99ドルまで値下げをしている。日本から直で購入することも可能だが、その場合は「祖先のルーツ」についての結果のみになるそうだ。

来たる「移民問題」に備えて考えるべきこと

「移民問題」は、これからの日本にとってより身近なトピックになることが予想される。

直近では、北朝鮮と米国が戦争をした場合、多数の移民が流れ込んでくるという問題が現実味を帯びていた。また、棺桶型人口構造となる日本では、労働生産を上げるためにも積極的に移民を受け入れるべきという議論が活発になるはずだ。家族を故郷に残して、出稼ぎに日本へ来る人も多くなるだろう。

一方で、逆のパターンも考えられる。30年以内に高確率で発生する南海トラフ大地震が発生するれば、台湾や韓国へと私たちが移住することだって十分に考えられる。震災の混乱の中では、離散家族の問題が発生する可能性も高くなる。

こうした状況を打破するためにも、日本は今のうちからDNA検査のテクノロジーの活用を考慮すべきではないだろうか。“家族がいる場所に戻れる”という事実を、叶わぬ願いに変えてしまわないためにも。

Photo by Nitish Meena

中川 明日香
中川 明日香

ライター。1994年生まれ。静岡大学で英米文学を専攻。学生時代に国際交流事業に携わるなかで、スロバキアに興味を持ち、長期留学を決意。現地の大学に通いながら、日本語講師のアルバイトで貯めたお金でヨーロッパ20カ国を周遊。その体験記を旅行メディア「Reisen」で執筆し始めたことをきっかけにWEBメディアの魅力を実感。帰国後「IDENTITY名古屋」でライターインターンを始め、現在に至る。