Netflixでつくる新しい授業のかたち。教育のためのドキュメンタリー上映が可能に

Netflixが教育を目的としたドキュメンタリーの上映を許可した。社会性のあるテーマを多く扱うNetflixは、教育の現場に新しい風を吹かせるのか。

本当はそう思っていないけどねと、心の中で毒づきながら回答した、国語や道徳の授業。正解として求められているらしいことを書けば、たいていはマルがついた。

しかし、現実の社会でそれが本当に「正しい」のか、議論する機会は少ない。私の知っている「正しい」や「当たり前」がひとつの見方でしかないことを知ったのは、それなりに歳を重ねてからだった。

Netflix」が教育を目的とした上映を許可したというニュースを目にしたとき、「正解」のない授業が広まることを期待した。

Netflixが教育を目的とした上映を許可

上映が許可されるのは、一部のNetflixのオリジナルドキュメンタリー作品。教育を目的とした場において、1回限り上映できる仕組みだ。上映可能な作品は、Netflixオリジナル作品一覧から確認できる。

Netflixのオリジナル作品には、人種問題やいじめ、宗教など、社会的なテーマを取り上げた作品が多い。上映可能なドキュメンタリー作品も多様なコンテンツが揃っている。

アフリカ系アメリカ人の歴史を紐解き、第89回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた「13th-憲法修正第13条-」や、ウクライナの公民権運動を追った「ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い」、性的暴行を受けた女性のためにコンゴに設立された場を描く「シティ・オブ・ジョイ ~世界を変える真実の声~」などがラインアップに並ぶ。

また、米国のニュース解説メディア「Vox」が多様な社会現象を取り上げる「世界の”今”をダイジェスト」や、米国の総合ニュースサイト「BuzzFeed」の記者の取材に密着する「世界の”バズる”情報局」も上映可能な作品に含まれている。まだ数は多くないが、今後もオリジナル作品の公開に合わせて、作品数が増えていくことを期待したい。

参考記事:「人種による貧富の差」から「K-POP」まで。今、語るべきトピックを20分で解説するNetflix番組をVoxが制作

「13の理由」を題材にN高で行われた特別授業

すでにNetflixの映像を使って、学校の授業が行われた例もある。2018年6月27日、学校法人角川ドワンゴ学園「N高等学校」(以下 N高)は、いじめや性犯罪を扱ったドラマ「13の理由」を題材にした特別授業を実施。(13の理由はドラマシリーズのため、通常は上映許可の対象外)代々木キャンパスの生徒約80名のほか、約170名の生徒がライブ参加した。

授業では「13の理由」のなかで、登場人物同士のすれ違いが起きたシーンや主人公が傷ついたシーンを視聴しながら、「自分だったらどうするか?」「どうすればすれ違いを防げたか?」といったテーマで意見を出し合った。

ディスカッションには匿名投稿できるオンラインツールを活用。約2,500件の意見や質問が投稿され、活発な議論が展開された。授業の終わりにはスクールカウンセラーなど、相談窓口を紹介し、悩みがある際は信頼できる第三者に相談することを呼びかけた。

現実社会と同じで、「13の理由」の世界にも「正解」はない。生徒たちは、教科書に書かれた「正解」を学ぶのではなく、「自分だったらどうすべきか」を考えなければいけない。共感しやすいキャラクターを題材に、自分なりの答えを探る授業は、きっと生徒たちにとって実りある時間になったはずだ。

私は将来、子どもと一緒に「Netflix」の「クィア・アイ」を観たい。ハイセンスな5人のゲイ「ファブ5」が冴えない男性を大変身させ、その過程で時に深い信頼関係を結んでいく作品。望めば人はいつだって変われるという希望を、バックグラウンドや信条、考え方が違っても、互いに分かち合おうとする姿勢の大切さを教えてくれるだろう。

日本に住むわたしの世界は狭い。友人のほとんどは日本人で異性愛者で無宗教だ。どれだけ言葉を尽くしても、子どもは見慣れた世界からはみ出すことを「普通ではない」と考えてしまうかもしれない。だからこそ、こうした作品を通して、多様なものの見方に触れ、考える機会を大切にしたい。

Netflixのドキュメンタリーを観る体験が、子どもたち、いや大人も含め、誰もが持つ「当たり前」をそっと揺さぶり、現実を生きるヒントをくれるといい。

野口美晴

派遣会社の人材コーディネーターとして勤務しながら、パラレルキャリアでライター活動を行っている。一児の母。関心領域はビジネス、教育、暮らし、子育て。