コンセプトは“共闘”ーースタートアップ特化型スペース「co-ba jinnan」はコワーキングの概念を刷新する

「コワーキング」という言葉が日本に輸入されて、数年が経過した。コワーキングスペースのパイオニアとなり、言葉を流通させた存在が「co-ba shibuya」だった。

こちらも輸入されたばかりのクラウドファンディングという新しい手法を用いて資金を集めて、コワーキングスペースという新しい価値観を渋谷の街に持ち込んだ。

時が経ち、「コワーキング」の潮流は新しい局面を迎えようとしている。

神南に生まれたスタートアップに特化したワークプレイス

10月11日(木)、渋谷・神南エリアにスタートアップに特化したコワーキングスペース「co-ba jinnan」がオープン。オープニングイベントには、大勢の人が詰めかけた。

co-ba jinnanは、ツクルバが展開する全国に広がるワーキングコミュニティ「co-ba NETWORK」の一員だ。co-ba jinnanには、個人から使えるフリー席、3人〜10人までの小規模のチームのための個室が用意されたワークプレイスとなっている。

個人からスモールチームまでが入れるようになっているのは、成長速度の早いスタートアップのためだ。スタートアップはあっという間に成長する。そうすれば、すぐに次のオフィスを探さなければならなくなる。

「co-ba」というブランドか、ツクルバのネットワークのためか、co-ba jinnanの個室はオープン前に満席となった。集まっているスタートアップの顔ぶれから、この空間が生み出す変化への期待が高まる。

日本酒専門WEBメディア「SAKETIMES」を運営する日本酒ベンチャー clear や、カスタムスーツオーダーブランドを展開するファッションスタートアップ FABRIC TOKYO 、フードトラックをマッチングするモビリティプラットフォーム「TLUCH」を提供する Mellow 、個人がプロジェクトをシェアするプラットフォーム「TEAMKIT」を運営する Lbose など、様々なスタートアップたちが入居している。

co-ba jinnanは、創業準備期から創業期までの起業家が集い、新しい事業やサービスを生み出していく場を目指すというのだが、スタートアップのためのコワーキングは、従来のコワーキングスペースとはどう違うのだろう。

コワーキングスペースはもはや“バブル”

「コワーキングスペースは、もうバブってるんですよ」ーーそう語るのは、co-ba jinnnanを運営する、”神南ボーイズ”だ。

(左:荻野高弘氏、右:吉田民瞳氏)

たしかに、コワーキングスペースは増えた。インディペンデントな空間以外にも、企業がオフィスにコワーキングスペースを併設することも珍しくなくなり、あちこちでコワーキングできる。

コワーキングスペースの差別化要因として挙げられるのが「コミュニティ」だ。コミュニティといえば、人が安心できたり、共感できる人とのつながりを得られたりするものというイメージがある。

最初、神南ボーイズもVCとの繋がりや充実した設備、有益なサービスを整えることで、起業家にとって優しいコミュニティを作ろうとしていた。だが、起業家たちに会い続ける中で、求められているのは安心できるコミュニティではないということに気づく。

「社会を変えてやる」と考える起業家たちは、生きるか死ぬかの日々を送る。そんな起業家たちに必要なのは、厳しく、互いに切磋琢磨できるようなコミュニティだった。ヒリヒリと生きる起業家たちが集えば、その場のエネルギーは計り知れないものになる。

荻野「渋谷には『渋谷ストリーム』など、メガベンチャーのオフィスも移転してきています。co-ba jinnanは、大きな資本の流れにも負けず、スタートアップが結束することで社会を変えていくような拠点にしていきたいですね」

2020年に向けて変化していく渋谷を目にしながら、どこか自分とは関係のない大きな流れによるものだと考えてしまう。変化を自分ごとにしていきたければ、仕掛けるしかない。

空間のコンセプトは「co-fighting」

とはいえ、スタートアップが大きな流れに立ち向かっていくためには、単体では力が足りない。より大きなうねりを作り出していくためにも、スタートアップは結束しなければならない。

co-ba jinnanは、スタートアップたちの力を集め、増幅する役割を果たそうとしている。そんな彼らが掲げるコンセプトは「co-fighting」、「共闘」だ。起業家には、コワーキングというバブってしまった概念ではなく、より攻めた概念が必要なのだ。

「co-fighting」は、何もスタートアップだけが対象ではない。co-ba jinnanも、様々なプレイヤーとコラボレーションしながら、スタートアップが戦うための環境を構築していく。

吉田「まず、9月にはエスエルディーとコラボし、入居者向けにコストの安い食事や早めに食べられる食事を提供することを発表しました。10月には、起業家とサポーターがつながるライブアプリ『ami』との連携を発表しています。この先も、様々なプレイヤーとコラボし、スタートアップを支援していきます。月一で何かしらのプレスリリースを出していくことを目指したいですね」

渋谷・神南エリアのコンテキストを受け継ぐ場所へ

co-ba jinnanが位置する神南は、ファッションやライフスタイル領域でカルチャーを生み出してきたエリアだ。今、このエリアには、ETICのようにco-ba jinnan以外にも起業家を支援する人々が集ってきている。

荻野「神南はかつて、パルコができたことで色んなインディー系、ゲリラ系のアパレルが増え、ファッションが盛り上がっていきました。そのムーブメントによって、エリアの価値を上がった。それが、次の世代に変わろうとしてるんだと思います。僕たちは、次はスタートアップがこのエリアを盛り上げる存在だと確信しています」

ファッションからスタートアップへとテーマは変わるが、co-ba jinnanは土地に根ざしたコンテキストを引き継ごうとしている。

吉田「入居しているスタートアップからは、Tシャツ作りのナレッジを聞かれたりするんです。僕たちが価値提供できるのは、VCの紹介とかじゃないんですよね。かつてのレコードレーベルのように、スタートアップを支援するレーベルのような存在として活動していきたいと思います」

モリ ジュンヤ
モリ ジュンヤ

『UNLEASH』編集長

株式会社インクワイア代表取締役 / UNLEASH編集長。1987年岐阜県生まれ。2010年より『greenz.jp』にて編集を務める。フリーランスとして独立後、『THE BRIDGE』『マチノコト』などの立ち上げを経験。2015年にinquireを創業し、2016年に書く人が集まるコミュニティ「sentence」を立ち上げ、2017年に『UNLEASH』を創刊。メディアとコミュニティを通じて、小さな経済圏たちを活性化し、より良い社会をつくることが目標。NPO法人soar副代表 / IDENTITY共同創業者 / FastGrow CCO など。

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